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インクルーシブ保育とは?意味・目的・現場での実践例までやさしく解説【保育士向け】

「インクルーシブ保育とは何ですか?」
近年、保育現場や研修、園だよりなどで目にする機会が増えた言葉ですが、「なんとなく聞いたことはあるけれど、正直よく分からない」「特別な支援が必要な子だけの話なの?」と感じている保育士さんも多いのではないでしょうか。

インクルーシブ保育は、決して特別な園や専門的な知識がある人だけが行うものではありません。実は、日々の保育の中にすでにその考え方はたくさん含まれています。本記事では、「インクルーシブ保育とは何か」を基本から丁寧に解説し、現場での具体的な実践例や課題まで分かりやすくまとめていきます。


インクルーシブ保育とは?基本の考え方をわかりやすく解説

インクルーシブ保育の意味と定義

インクルーシブ保育とは、障がいの有無や発達の特性、国籍、家庭環境などに関わらず、すべての子どもが同じ場で共に育ち合うことを大切にする保育の考え方です。

「インクルーシブ(inclusive)」には、「包み込む」「すべてを含める」という意味があります。つまり、子どもを環境に合わせるのではなく、一人ひとりの違いを前提として、その子に合った関わりや環境を整えていくという姿勢がインクルーシブ保育の土台です。

「統合保育」「特別支援保育」との違い

インクルーシブ保育は、従来の「統合保育」や「特別支援保育」と混同されがちですが、考え方には違いがあります。

  • 特別支援保育:支援が必要な子どもに対して、個別の配慮や支援を行う

  • 統合保育:障がいのある子とない子が同じ場で過ごすことを重視

  • インクルーシブ保育:すべての子どもが「違いをもった存在」として尊重される環境づくり

インクルーシブ保育では、「支援が必要な子だけに特別な対応をする」のではなく、全員にとって過ごしやすい保育環境を整えることが重要視されます。

なぜ今、インクルーシブ保育が注目されているのか

少子化や社会の多様化が進む中で、保育の役割も大きく変化しています。発達特性の理解が進み、「グレーゾーン」と呼ばれる子どもが増えてきたことも、インクルーシブ保育が注目される理由の一つです。

また、文部科学省や厚生労働省の方針でも、「誰一人取り残さない」教育・保育の実現が掲げられており、保育園・幼稚園は多様性を育む最初の社会として、重要な役割を担っています。


インクルーシブ保育の目的と大切にしたい考え方

すべての子どもが「その子らしく」過ごせる環境づくり

インクルーシブ保育の最大の目的は、すべての子どもが安心して自分らしく過ごせることです。
「みんなと同じことができるか」ではなく、「その子がその子として認められているか」という視点が大切になります。

できないことを直すのではなく、できる方法を一緒に探す。この姿勢が、子どもの自己肯定感を育てる土台になります。

多様性を認め合う力を育てるねらい

インクルーシブ保育は、支援が必要な子どものためだけのものではありません。
一緒に過ごす子どもたちにとっても、「人はみんな違っていい」「助け合って生きていく」という価値観を自然に学ぶ機会になります。

小さな頃から多様性に触れることで、思いやりや共感力が育ち、将来の人間関係にも良い影響を与えます。

保育園・幼稚園に求められる役割の変化

これからの保育現場には、「教える」「できるようにさせる」だけでなく、子ども一人ひとりの背景を理解し、寄り添う力がより求められています。インクルーシブ保育は、まさにその象徴と言えるでしょう。


保育現場でのインクルーシブ保育の具体的な実践例

日常の保育活動でできる工夫

インクルーシブ保育は、特別な活動を用意しなくても、日常の中で実践できます。
例えば、制作活動では「完成形」を一つに決めず、素材や工程を選べるようにするだけで、子どもの参加しやすさは大きく変わります。

また、集団活動が苦手な子には、無理に同じペースを求めず、参加の仕方に幅をもたせることも大切です。

子ども同士の関わりを支える保育者の役割

子ども同士のトラブルやすれ違いも、インクルーシブ保育では大切な学びの場です。
保育者が間に入り、「どうしてそう感じたのか」「どうしたらよかったのか」を言葉にすることで、子どもたちは相手の気持ちを考える力を育てていきます。

環境構成・声かけ・ルールづくりのポイント

見通しがもてる掲示物、静かに過ごせるスペースの確保、肯定的な声かけなど、環境づくりはインクルーシブ保育の要です。
「ダメ」「早く」ではなく、「こうしてみようか」「次はこれだよ」と伝えるだけで、子どもの安心感は大きく変わります。


インクルーシブ保育を進める上での課題と向き合い方

保育士が感じやすい不安や悩み

「専門知識がない」「人手が足りない」と感じる保育士さんも少なくありません。しかし、インクルーシブ保育に完璧は必要ありません。一人で抱え込まず、できることから少しずつが大切です。

保護者理解・連携の大切さ

インクルーシブ保育を進める上で、保護者との信頼関係は欠かせません。園の考え方や子どもの姿を丁寧に共有することで、不安や誤解を防ぐことができます。

園全体・チームで取り組む視点

個人の頑張りだけでなく、園全体で共通理解をもつことが、インクルーシブ保育を継続する鍵です。職員間での情報共有や振り返りの時間を大切にしましょう。


まとめ|インクルーシブ保育とは「特別なこと」ではなく日々の保育の中にある

インクルーシブ保育とは、誰かのためだけの特別な保育ではありません。
一人ひとりの違いを認め、その子らしさを大切にする姿勢こそが、インクルーシブ保育の本質です。

日々の声かけや環境づくり、小さな配慮の積み重ねが、子どもたちの安心と成長につながります。
「完璧を目指さなくていい」。その気持ちで、できることから取り入れていきましょう。