近年耳にすることがある「メンター制度」という言葉。どういうものかご存じですか?
一般企業だけではなく最近は保育園でも導入されています。新人の職員が働きやすいように、年齢の近い先輩職員が相談に乗ったりサポートをする制度のことです。
「結局先輩だから相談しづらいのでは…?」「一緒に組むわけではないのだからいつ相談に乗ってもらったら良いの?」など新人の職員の先生からしてみると不安の方が大きいかもしれません。
ですが、1年中行事や通常業務に追われ忙しい保育現場。自分のことをサポートしてくれる決まった先生がいるというのは心強いものです。子どもとの関わりと同じように、先輩の職員とも信頼関係を築けると、仕事に対する意欲や楽しさも変わってくるものですよ。今回はそんなメンター制度についてお伝えしていきます。
先述しましたが、メンター制度とは、年齢の近い年上の先輩職員や、社歴の近い先輩職員が新人職員や若手職員をサポートする、新入職員からすると相談しやすい兄/姉のような制度です。
メンターは英語のMentorからきており、「良き指導者」「優れた助言者」などという意味合いになります。
メンターには、社会人としてのあり方や仕事に対する考え方など、幅広い視点から相手の成長を支援する役割が期待されています。
メンター制度のメリット
それでは、メンター制度導入のメリットをいくつかご紹介します。
1.先輩職員が持つ経験や知識の伝承
新人の職員は、最初は”何を聞いたら良いか分からない”状態です。
現代では「先輩の背中を見て学ぶ」というのま難しくなってきています。例えば外遊びの際子どもが危険にならないようどの場面を特に注意してみていかなければならないのかや、失礼にならない保護者対応など、経験がある職員には当たり前にできることも新人の職員にとっては難しいものです。
1から10全て伝えるのではなく、最低限社会人として身につけていて欲しい基本的な対応を先輩職員から聞けると新人職員のモチベーションも上がり園内の雰囲気も良くなっていくでしょう。
2.新人職員が抱える職場での問題解決の支援
年齢の近い職員がサポートしてくれることは新人職員にとってはとてもありがたいことです。主任には聞きづらいことも年の近い先輩職員になら聞けるということもあるのです。
不安や分からないことだらけの新人職員は、溜め込んでしまうと心を病んでしまったり、突然の離職につながったりします。こまめに声を掛けてもらえることで相談しやすくなり、問題を解決していくことで職員の成長にも繋がっていきます。
3.新人社員の離職・メンタル悪化の防止
気軽に何でも相談できる相手ができることで、孤立を防ぎ安心できる居場所をつくり出し、離職やメンタルの悪化を防ぐくことができます。
4.メンターとなる先輩職員の成長
新人の職員の先生の大きな成長に繋がることは間違いないメンター制度ですが、メンターとなる先輩職員も「教える」ことで更に成長します。「教える」ということは「教わる」よりも根気が必要で難しいことです。
上手く伝わらないことがあったり、思ったように関われなかったりする葛藤もあるかと思いますが、新人の職員の成長と共に、先輩職員も成長していけるのです。
メンター制度のデメリット
メリットも多くありますが、デメリットがあるのもメンター制度です。デメリットもいくつかご紹介します。
1.メンター社員が日々の業務にプラスしてサポートするため、業務負荷が高くなる
通常業務に加えてサポートを行うことになるため、どうしてもメンターの業務的負荷が増えてしまう傾向があります。メンター職員の心のケアの必要になってきます。
よくメンター職員の事を気にしない傾向があると思います。
2.メンターによってサポート度合いに差が出て不公平感を感じる可能性がある
メンターによって、頻度や接し方は多少バラツキがあると思います。そのため、うまく行っている他と比べて新人職員が不公平感を感じる可能性もあります。
3.相性次第では、信頼関係の構築に時間がかかる
メンター職員と新人職員の性格や相性次第では、信頼関係の構築が難しくなる可能性もあります。
新人職員が質問しにくかったり、しっ責や注意が多くなってしまう関係になってしまう可能性もあるというのもデメリットの一つです。
上手く関係性が構築されていくととても良い制度であるメンター制度。
ですが実際の現場では、なかなか上手くいかない場合も少なくないようです。人対人の関係性の構築なので、全員がスムーズに構築できるというのは確かに難しいことだと思います。メンター職員の業務的、精神的負担が大きく、積極的に自らメンターになりたいという職員がいないことも現状のようです。メンター制度は保育現場にとって必要なのでしょうか?
意味のないメンター制度ならいらない
「メンター制度」と検索すると 「メンター制度 いらない」「メンター制度 うざい」などといった関連ワードが出てきます。
先輩職員にとっても新人職員にとっても「メンター制度」という言葉だけが負担になってしまっている場合も多く存在するということです。制度として該当の職員に丸投げすのではなく、職員や園にとって良い制度となるよう、負担になり過ぎないようなルール作りや制度自体の見直しが必要であるということですね。
メンター制度の失敗例
デメリットでも記述しましたが、メンターの職員と新人職員が同じ学年の担任だと、新人職員が心を開くのはなかなか難しく、メンターの職員も「対話」よりも「業務的指導」での関わりになっていまう可能性が大いにあります。メンターは、別の学年の職員の方が適しているでしょう。
また、メンターの適正があり職員はどうしても限られているため、特定の職員への依頼が集中するケースもあります。メンター職員の負担も大きい為、多くの職員に平等に機会を与えるようメンターの人選を分散させることも必要です。
チューター制度というのは「教育」「指導」的な意味合いとなります。年の近い先輩職員がサポートというよりは、上司が業務が円滑に進むように指導するという状態が近いのではないでしょうか。
メンター制度とは意味合いが違い、新人職員にとっては緊張や不安が大きいかもれませんが、社会人として確実に成長できます!チューター制度についてもご紹介します。
チューター制度とは?
「個人指導教官」という意味で、チューター制度とは大学の個別指導制度のことです。学生1人〜数人単位に1人の指導教官(チューター)がつき指導を行います。企業では新入社員に教育係がつく制度を指して使われることが多いです。
メンタリングとコーチング
メンタリングとは、メンターの先輩職員と新人職員が一対一で対話し、社会生活や心理的なケアを行いながら成長を支援する人材育成手法です。メンターが明確な答えを教えるというよりは、対話を繰り返しながら新人職員に対して気付きを与え、自発的な成長を促すことが大きな特徴です。業務だけではなく、職場の人間関係や心理的な不安の解消、キャリアに関する悩みなども含まれます。メンタリングは自由なコミュニケーションを図ることで、お互いの成長を促すこととも定義されており、メンターの成長を促すこともメンタリングの目的です。
コーチングとは、直接的に答えを教えるのではなく、対話を繰り返すことによって気付きや正解へ導く人材育成手法です。一対一の対話をするという意味ではメンタリングと似ていますが、コーチングは業務に対するつまづきや問題点を話していくことがメインです。仕事に対する悩みに向き合っていくということになります。
メンター制度とアプレンティス制度
日本ではまだあまり聞かないアプレンティス制度。どんな制度なのかご紹介したいと思います。
アプレンティス制度・・・apprenticeを直訳すると見習い・実習生・従弟という意味になります。 その名の通り、企業が候補者を見習いとして雇い、実践的な職業経験を積ませる形態のことを指します。インターンシップは無給ですが、アプレンティスとして企業に雇用されると、雇用主から賃金をもらいながらスキルを習得することできる制度です。イギリスでは1964年に制度化されています。
メンター制度とエルダー制度、ブラザー・シスター制度、プリセプター制度
メンター制度の他にも様々な制度がありますのでご紹介します。
エルダー制度・・・「年上の人・年長者」という意味で、企業でのエルダー制度は新入社員に対するOJT制度を指します。比較的経歴の浅い先輩社員が、新入社員と2人1組となって仕事をする体制に対して使われることが多いです。
ブラザーシスター制度・・・「兄弟・姉妹」という意味で、新入社員と年齢の近い若手先輩社員が担当としてつき、会社に慣れるまでのサポートをする制度のことです。新卒採用の社員が対象になることが多いです。
プリセプター制度・・・一人の先輩看護師(プリセプター)がある一定の期間、一人の新人看護師(プリセプティ)に対して、マンツーマンで臨床実践を指導する方法です。 新人看護師のリアリティショックを緩和し、看護実践能力の獲得を支援する教育体制として導入しています。
今回は、園の職員間のコミュニケーションを円滑にするためのメンター制度やその他の制度についてお伝えしました。近年は新人職員の途中退職や職員の一斉退職などのニュースも多く耳にします。職員の業務的負担や心のケアをどのように行っていくかも園としても考えていかなければなりません。各園の雰囲気や職員の先生に合った制度を導入していくことも良いかもしれませんね。